心豊かな暮らしとものづくり。千葉・九十九里で見つけるとっておきのクラフト5選
長く弧を描く美しい海岸線と緑豊かな里山に囲まれた九十九里は、その自然環境に魅せられた多くの作り手たちが集う場所です。
手仕事にこだわり、じっくりと向き合うことで生み出される作品は、日々の暮らしをちょっと特別にし、心を豊かにしてくれます。
今秋には、そんな作品が集結するクラフトマーケットが初開催!作り手の想いがこもった、とっておきの品を見つけに行きませんか。
その一歩が特別になる、オーダーシューズ「小高善和靴工房」@白子町
極上のフィット感。自分だけの特別な一足を
九十九里南部に位置する白子町の、のどかな風景の中に佇む「小高善和靴工房」。“歩くのが楽しくなる”をテーマに、靴職人の小高氏が一人ひとりに合わせた木型を用意し、完全手作りのオーダーメイド靴を製作しています。丁寧な採寸はもちろん、カウンセリングで足の悩みや生活スタイルまで真摯に向き合って作られる靴は、既製品にはない特別なフィット感。長く大切に履き続けるほど、革が馴染んで色合いが変化し、愛着とともに味わいも深まります。
靴づくりを体験するかけがえのない時間
工房では、靴づくりを気軽に体験できるワークショップ「くつつくりカフェ」を開催。小高氏が直接丁寧に教えてくれるので、初めてでも安心して参加できます。特に人気なのが、1歳の誕生日プレゼントとしてもおすすめのベビーシューズ作り。自分の手で一針一針愛情を込めて作りあげる喜びと、革ならではの温もりに包まれる、特別な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
所在地:長生郡白子町驚156
伝統と感性が織りなす、究極の循環型藍染「NORABI」@大網白里市
元アスリートが挑む、日本古来の発酵藍染
元プロサッカー選手・品田彩来氏が手掛ける「NORABI」は、日本古来の発酵技法にこだわり、化学薬品を一切使わず多彩な作品を展開する藍染プロジェクト。「本建て正藍染」と「天然灰汁発酵建て」という、自然素材を生かす藍染により、空や海を連想させる柔らかな青色と、くすみのある濃い青色が生み出されます。全て手染めによる一点ものとなっており、海外での経験とアスリートならではの感性を落とし込んだ作品は、ジェンダーレスでスタイリッシュなデザイン。工房では藍染体験も行われていて、天然繊維のハンカチやストール、Tシャツなどを染めることができます。
「自分に何ができるか」を追求するものづくり
環境問題に対して自分にできることを追求した先で、藍染に出会ったという品田氏。「蒅(すくも)」や木灰由来の「灰汁」など自然の恵みだけを材料に、微生物の力で染め上げる技法は、使い終えた染め液さえ堆肥として活用することが可能な、まさに“究極の循環型”です。持続可能で環境負荷が少ないものづくりを通じて、個人でできるサステナブルライフを提案し続けています。
所在地:大網白里市星谷262
Column
“食”にも宿るクラフトマンシップ①「Bocchi」@旭市
九十九里の最北端・旭市で今年で10周年を迎えるピーナッツブランド「Bocchi」。人気のピーナッツペーストをはじめとする加工品の数々は、落花生本来の濃厚な風味と香りを引き出す熟練職人の手作業により生まれています。市内に昨年オープンした直営店「Bocchi concept shop」では、落花生を使ったカレーやスイーツなどの限定メニューを提供。ここでしか味わえない美味しさをぜひ!
「Bocchi concept shop」
所在地:旭市神宮寺8502-2
シンプルだからこそ、個性が光る焼締陶「六地蔵窯」@長柄町
炎と煙、灰が織りなす洗練された「焼締陶」
釉薬を一切使わず、絵付けもせず、炎と煙、灰のみで器を焼き上げる「焼締陶」。長柄町の「六地蔵窯」では、全ての制作工程を手作業にこだわり、土づくりから燃料の薪割り、窯焚きまでを行っています。窯主の安田裕康氏自ら5年をかけて開墾した土地で、自作の登り窯を使い、年に一度の窯焚きで生み出される作品は約3,000点。窯の内部温度は1,000℃を超え、2週間の間、24時間体制で温度管理にあたります。職人魂溢れる貴重な窯焚きの様子は、誰でも見学が可能です。
六地蔵の土に、備前の魂を宿して
六地蔵窯の焼締陶は、備前焼の技術を基に、岡山と千葉の土を合わせて練られた粘土で作られています。六地蔵の土が持つ繊細さを個性と捉え、表面に生まれる独特のひび割れとして表現した花器などの作品は、まさに唯一無二のもの。一つ一つが豊かな個性を持ち、力強い存在感と、土本来の味わいが際立つ陶器をぜひ手に取ってみてください。
所在地:長生郡長柄町六地蔵579-1
暮らしに寄り添う天然木のインテリア「Studio Kirin」@山武市
地元産天然木の温もりを宿す家具
山武市に工房を構える「Studio Kirin」では、地元で長く育まれてきた県産ブランドの木材「サンブスギ」を使い、その軽くて柔らかな質感を生かしたインテリアを制作しています。テーブルや椅子などの家具から、器や弁当箱などの小物までアイテムはさまざま。工房名にもなっている“きりん”を象ったチャーミングな一輪挿しも人気です。丁寧な手仕事で仕上げられた作品には、見ているだけでほっとするような、木の温もりが宿っています。
使い手とともに時を刻む
爽やかな香りと濃淡のある美しい木目が魅力のサンブスギは、油分が強く丈夫なのも特徴。生きた素材である天然木は、温度や湿度によって少しずつ変化し、10年、20年と使い込む中で、傷ができ、色合いが変わり、より味わい深いものになっていきます。そんな経年変化を楽しみながら、長く使い続けられる杉の魅力を伝えたいと、日々木材と向き合う「Studio Kirin」が作るのは、暮らしに寄り添う優しいインテリア。生活スタイルに合わせた、オーダー家具の注文も可能です。
所在地:山武市松ヶ谷ロ2740-1
Column
“食”にも宿るクラフトマンシップ②「Rusty Nest Brewery」@大網白里市
白里海岸に面した廃工場跡地を活用し、地域に賑わいを取り戻したいという想いから生まれたクラフトビールブランド「Rusty Nest Brewery」。今年6月にオープンした醸造所では、定番の“IPA”をはじめ、爽快感と喉越しにこだわったビールが造られています。併設するカリフォルニアテイストのCafe&Barでは、シェフが手掛けるご当地グルメなどメニューも充実!海風を感じながら、ビールとともに非日常を味わえます。
「Rusty Cafe&Bar」
所在地:大網白里市南今泉4881-125
九十九里から伝えたい、ものづくりへの想い。菅原工芸硝子 代表取締役社長 菅原裕輔氏
「Sghr(スガハラ)」ブランドとして国内外に知られ、創業以来“手づくり”にこだわり続ける九十九里のガラスメーカー「菅原工芸硝子」。代表の菅原裕輔氏に、この地で続けるものづくりへの想いや今後の展望について伺いました。
profile
菅原 裕輔(すがはら ゆうすけ)
千葉県九十九里町生まれ。1932年創業の菅原工芸硝子株式会社 3代目代表取締役として、職人が持つ無限の可能性を引き出し、ガラスの新たな表現や価値を追求しながら、ハンドメイドならではのオリジナルガラス製品を生み出し続けている。資源を循環させるものづくりや、作り手と使い手を繋ぐクラフトイベント「くらしずく」を工房敷地内で開催するなど、業界と地域の未来を見据えた活動にも力を注ぐ。
ガラスの“美しい瞬間”を捉えたデザイン

- -ものづくりへのこだわりや、大切にしていることを教えてください

- 天然の砂を原料とするガラスは不思議な素材で、液体の状態から徐々に固まる過程で息を吹き込んだり、ゆすったりすることで様々な表情が生まれます。 菅原工芸硝子のものづくりの特長は、日々ガラスと向き合う職人が、作業の中で工夫しながらその美しい瞬間を探し出し、自らデザインを手掛けていること。流行にとらわれず、ガラスの美しさや新たな魅力を追求し、「暮らしの中で使えるもの」を作ることにこだわっています。

作り手の想いを付加価値に。「くらしずく」への想い

- -人気のクラフトイベント「くらしずく」について教えてください

- 素敵な創作活動をする作家さんが、その想いを伝える機会を増やせたらと考えていました。クラフトイベントという場で、作り手と使い手が直接交流し、作品の裏側にあるストーリーを共有することで、購買体験そのものも作品の価値となっていけば良いと思っています。今では全国からイベントへの出店希望があり、作家同士の新たなコミュニケーションが生まれるのも「くらしずく」の魅力の一つ。昨年から、出店者と菅原工芸硝子がコラボレーションして新たな製品を生み出す取組にも挑戦しています。

地域の未来に繋げる循環型のものづくり

- -今後の展望について教えてください

- 現在、国内で手作りにこだわるガラスメーカーは10社ほど。今後も「日本のものづくりだからこそできること」を大切にしていきたいと思っています。同じくらい大事にしているのが“循環型”のものづくり。今年は新たに、従来除けて使われなかった溶けたガラスを使い、敢えて不均一な模様など個性を楽しむ「Sghr Imperfect」シリーズの販売を開始しました。また、九十九里の海岸から飛んでくる砂をガラスの原料として活用するための取組も進めています。

【菅原工芸硝子】
所在地:山武郡九十九里町藤下797
10月18、19日開催!「くらしずく2025」
「くらしを豊かにする作品」「それを生み出す作家」「それを大切につかう使い手」が出会う場として、2017年より菅原工芸硝子の敷地内で開催されているクラフトイベント。今年は多くの新規出店者を含む、個性豊かな作家が集います。ワークショップや地元グルメを楽しみながら、一期一会の作品をぜひ手に取ってみてください。
会場:山武郡九十九里町藤下797 [Sghr 菅原工芸硝子工房敷地内]
作り手が一堂に集結。「日々と手、九十九里」が11/29に開催!
九十九里で活躍する作り手が一堂に会するクラフトマーケット「日々と手、九十九里」が、目黒区自由が丘にある「JIYUGAOKA de aone」で初めて開催されます。今回紹介した全ての作り手に加え、山葡萄編みの籠を作る「OCTBOX」や、無垢材でカップを制作する「atelier dehors」、布を染めバッグや小物を作る「あしゅ」の10ブースが出店予定。
九十九里に息づく上質なものづくりを、ぜひ会場で体感してください。
開催期間:2025年11月29日(土) 11:00~16:00
開催場所:JIYUGAOKA de aone(東京都目黒区自由が丘2-15-4)
心豊かな暮らし。九十九里クラフトMAP
- 小高善和靴工房
- NORABI
- Bocchi concept shop
- 六地蔵窯
- Studio Kirin
- Rusty Nest Brewery
- Sghr 菅原工芸硝子
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【特集】九十九里エリアの定番・有名・穴場・おすすめ観光スポット62選【2025年度】
九十九里エリアは、広大な砂浜と青い海、そして内陸には緑豊かな田園風景が広がり、自然あふれる人気の観光スポットです。サーフィンや海水浴、ハイキング、グルメなど、四季を通じて楽しみ方は多彩。新鮮な海の幸や温泉も魅力で、首都圏からのアクセスも良好。日帰り旅行や週末のリフレッシュ旅に、九十九里の魅力を体感しませんか?